3.1 コンピュータの基本構造:電子機器として

コンピュータは集積回路という部品を中心に作られた電子機器である。現在使用されているコンピュータは基本的には次の要素から構成されている。

 

プロセッサ:数値の計算を行ったり、条件を判定したり、入力と出力(以下では入出力)に指示する。CPUもしくは中央処理装置(central processor unit)とも呼ぶ。そして、プロセッサは、大まかには次の二つに分かれる。

・データパス:演算処理(計算やデータの加工など)を行なう。体に例えると、「手や足」である。一時的にデータを格納するレジスタや演算装置などからなる。

・制御装置:何を行うべきかをデータパスや入出力に指示する。体に例えると「神経系」である。

メモリ:実行中のプログラムと、プログラムが必要とするデータを格納する場所である。記憶装置とも呼ばれる。

 

コンピュータの基本構成の概念図

 

入出力装置:I/Oとも呼ぶ。キーボードやマウスなど、コンピュータにデータを入力するものや、ディスプレイのようにコンピュータからデータを出力するものがこれにあたる。ネットワークのように、入力と出力の両方の機能を持つものもある。

 

この基本構造における重要な点の一つに、コンピュータの動作を決めるプログラムがメモリに格納されるということがあげられる。これにより、プログラムを変更することによりコンピュータの動作を変えることができる。パソコンにゲームプログラムを入れればゲームマシンとなり、ワープロプログラムを入れればワープロとなるのは、この特徴によるものである。メモリにプログラムを搭載するというコンピュータの基本構造は、プログラム内蔵方式と呼ばれる。メモリに格納されたプログラムは、データとしてプログラムによって変更の対象になるという点も重要である。コンピュータを停止することなしに、別のプログラムを投入することができるのは、プログラム内蔵方式によるものである。メモリに格納されたプログラムをその他のデータと区別することなく扱うことができるような構造はフォン・ノイマン型アーキテクチャと呼ばれる。これに対して、データとプログラムとを区別して扱う構造をハーバードアーキテクチャと呼ぶ。

最初の現代的なコンピュータであるEDSACが開発されて以来、コンピュータは飛躍的な進歩をとげたが、このフォン・ノイマン型アーキテクチャは、そうした様々なコンピュータに共通した、ほぼ不変の構造となっている。

コンピュータは電子工学的に見れば(たとえ小さなパソコンといえども)巨大な電子回路である。たとえばプロセッサを実現するインテル社のCore2Duoの場合、2億9100万個のトランジスタから構成されている。したがって、コンピュータは電子回路技術の発展なしには生まれもしなかったし、また、社会的に影響を与える存在にもならなかっただろう。けれども以下では、そうした電子工学的な側面は省略し、コンピュータならびにコンピュータを中心とした情報システムの情報科学技術的な仕組みについて主に述べる。電子工学的な側面については、最後の3.7節で補足する。