1.1 情報処理の三つの本質

物事の本質を簡潔に表すのは難しいし、また誤解される恐れもある。しかし、ここではあえて情報処理(情報を生成し、伝達し、加工するという作業)の本質を次の三つにまとめてみる。

 

本質1:情報を表すデータはすべて0と1で表される。データの加工はすべて単純な計算の組み合わせで表現できる。

本質2:情報の伝達や加工、そして生成の大部分は電子回路により実現できる。

本質3:情報処理の大部分が高速化・自動化できるし、また高速化・自動化される。

 

これらの本質は独立ではない。本質1→本質2であり、本質1&本質2→本質3である。各本質についてもう少し詳しく述べ、上記の関係について説明する。

 

本質1:データは01で表され、加工は単純な計算の組み合わせで実現できる

情報には本来形がない。人は、それを伝え、記録に残すためにデータという形のあるものにしてきた。そのデータが情報処理の対象となるものであるが、それは0と1の列(これを以下では2進列と呼ぶ)として表すことを本報告書ではデジタル化と呼ぶ。もちろん、近似でしかない場合もあるが、すべてのデータは非常によい精度でデジタル化できるのである。

一方、そのデータを生成したり、加工したりする処理は、実は、非常に単純な計算の組み合わせで実現可能なのである(もちろん情報処理のうち、情報の生成のように人間の介入が必要な部分もある)。具体的には、デジタル化されたデータを数だとみなすと、それに対する処理は、すべて、

(1) 自然数に対する+1、-1の計算、そして

(2) 変数の値が0になるまで指定した作業を繰り返す

という基本計算の組み合わせだけで表わすことができる。このように(1)、(2) の組み合わせで表わすことを本報告書では計算化と呼ぶことにする。

高度な科学技術計算から文書の作成やメールの送受信まで、様々な処理はすべて計算化できる。

本質2:情報処理は(情報の生成の一部を除き)電子回路により実現できる

本質1の技術的な帰結が本質2である。0と1ならば電気のオンオフ、あるいは電圧の高低で表わすことができる。さらに、そのように電気的に表わされたデータ(の各ビット)の基本計算であれば、比較的単純な電子回路で実現できる。したがって、本質1の帰結として、すべての情報処理は電子回路により実現できる、という本質が導かれる。ただし、量子計算のような異なるタイプの計算方式や、分子計算のように、電子回路を用いない計算装置も登場しており、従来の電子回路だけではなくなってきている。

本質3:情報処理は高速化・自動化できる.そして高速化・自動化される

情報を伝達したり加工する過程が電子的に実現されることから、情報処理の高速化は当然生まれてくる。また、データの加工(や生成の一部)を実現する時に基本となる「繰り返し」を発展させれば、処理の自動化にもつながる。したがって、本質1と2の帰結として「情報処理は高速化・自動化できる」という本質が導かれる。

さらに高速化・自動化できるのであれば、それを実際に行ないたい(あるいは高速化・自動化へと突き進む)というのが人間の願望であり、社会の要請でもある。この結果、後でも述べるように、大量のデータが世の中にあふれることになり、その量が質をも変える現象を生み出している。